(トプカプ宮殿 割礼の間前のクエルダセカ技法タイル) 11~13世紀、アナトリアにはセルジューク朝あり、ビザンティン帝国ありと、イスラム 教徒、キリスト教徒が平和に共存する時代が続いていました。 それが13世紀モンゴルの侵攻によりセルジューク朝崩壊すると、このバランスが崩れ、 アナトリアは君侯国(ベイリック)が割拠するベイリック時代にはいります。 君侯国間抗争の時代です。この時代、建築物の破壊や美術工芸品の略奪、芸術活動の 衰退など負のイメージが強いのは打ち消すことができません。 ですが逆にメリットもありました。 力を見せ付けるべく新しい建築物を建てたり、征服地域より職人や画家を捕虜として連れ 帰り自国のアトリエで働かせたりしました。 こうして、様式や技術がミックスし傑作が生まれ出ることとなるのです。 この混沌の中で作られたベイリック時代からオスマン朝初期のタイルがとても面白い! その一つがクエルダセカ技法タイル。(彩釉技法) アナトリアでは、14世紀後半から15世紀前半に用いら始められ、イスタンブルでは 16世紀にも使われました。 この技法では、まず素地土を型押しあるいは彫ったりして形成し焼成します。 第一焼成後、色釉薬が互いに交じり合わないように、蜜蝋あるいは植物油とマンガンの 混合物で輪郭を線描します。その後色釉薬によって彩色し、再度焼成です。 (ブルサにあるイェシルモスク。クエルダセカ技法タイルとモザイクタイルを見事に調和 させています。とても細かく丁寧に作られたタイルで覆われています。 写真を見ていたら、また行きたくなって来ました。) オスマン朝初期のブルサとエディルネの作品は、装飾文様は細かく繊細、色数も多く、 彩色の際、色の濃淡まで使い分ける丁寧さです。素晴しいです。 いずれもテブリーズ職人の仕事であると言われています。 (ブルサ、イェシルモスクのミフラブです。以前に紹介したエディルネのムラディエモスクの ものとよく似ています。) (ブルサ、イェシル廟のタイル。花びら部分の色、濃淡をつける丁寧さ!) (エディルネ、ムラディエモスクのミフラブ。この細かさ!タブリーズ職人のなせる技!) 時代が下り、イスタンブルが首都となってからの作品は、モチーフは大きくなり色数も 減少していきます。 (ヤウズ・スルタン・セリム廟入口。) (トプカプ宮殿。幾何学文様が綺麗です) イスタンブルでも使われていたクエルダセカ・タイル、ミマル・シナンが宮廷建築長に なってからは、彼の初期の幾つかのモスクと廟で使われただけで、後は皆無と言って よいほど使われなくなりました。 クエルダセカ、とても繊細で素敵な技法なのに、シナンの好みじゃなかったのかなぁ~。 シナン以降のタイルは、モチーフ、色のバリエーションは増えて華やかになっていきます が、技法としては、釉下絵付けのみとなってゆくのです。 ほんと、残念。残念で仕方がない。。。 どうして、クエルダセカ・タイルを使わなかったのですか?シナンさん。
by ateliercinicini
| 2010-10-06 21:35
| 様式・文様・技法の話
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Comments(4)
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yildizKSmama
at 2010-10-30 14:16
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先日制作したタイルが、クエルダセカ技法でした。
クリスマス用の飾りタイルです。 輪郭は 「蜜蝋あるいは植物油とマンガンの混合物で輪郭を線描」 なのですね。 私は今回、シャープペンシルで輪郭を書き間に 釉薬を流し込んで作りました。 シャーペンB芯には油分が多く含まれているのだそうです。 ポッコリした感じが、とても可愛くクエルダセカのタイルは 大好きです。でも、ミマル・シナンさんにはお気に召さなかったのでしょうか。残念だわ。
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ateliercinicini at 2010-10-31 19:32
◆yildizKSmama さん
クエルダセカ・タイルを作られたのですか! 面白かったですか?難しかったです? 私も、一度試してみたいのですよ。 輪郭を「蜜蝋あるいは植物油とマンガンの混合物で輪郭を線描」していたのは、14世紀後半から16世紀ですね。 現在はトルコではほとんど作られていませんので、、、 >私は今回、シャープペンシルで輪郭を書き間に >釉薬を流し込んで作りました。 >シャーペンB芯には油分が多く含まれているのだそうです。 へぇ~。シャーペンの芯の油分で釉薬の流れ込みを防ぐのでしょうか? 興味深いですね。焼成後の輪郭部分は素地の色がでるのかしら? ますます試してみたくなりました。 ほんとにね、なぜでしょうね? シナン的には、そのぽっこりした質感が気に入らなかったのか? それとも色? 生産ラインの複雑さ? 今となってはなぞですね。。。
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yildizKSmama
at 2010-10-31 23:49
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クエルダセカタイル面白かったです。
私は一番デザイン的には好きな技法です。まだまだ、初歩の初歩 なので簡単な方法で作りましたが、もっと難しいのもあるのかも しれません。 シャープペンの芯の油分で釉薬を押さえて流れないように 出来るようです。 クエンカタイルのように、土手を作らないのに本当に不思議です。 焼成後は輪郭には、シャープペンの色は残っていませんでした。 今週もまたクエルダセカ技法でコースターセットを作ります。 幾何学模様でちょっと、面白い課題なので楽しみです。 図書館でタイルについての本を借りてみました イスラム・オリエント・オランダ・スペイン・イギリス・中国そして日本・・・本当に世界中には色々なタイルがあるのだと 驚きとデザインの多彩さに感動でした。
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ateliercinicini at 2010-11-02 05:26
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アトリエ・チニチニより
イスタンブルの新市街、
シシリ・ジャーミー近くにて の~んびりトルコペースで タイル画制作をしています。 お近くにお越しの際は、 お気軽にお立ち寄り下さい 。^^ ◆ タイル絵付け教室 【定期コース】 ご都合の良い日時に受講 して頂けます。 予約制ですので、不定期 にしかお時間のとれない 方にもご参加頂けます。 【短期フリー制作コース】 作りたい作品を集中して 制作するコースです。 オリジナルデザインの タイルのプレゼントや、 表札の自作など、 目的に合わせ、 短期間で仕上げて 頂けます。 【体験コース】 制作時間2~3時間 旅行者の方もお気軽に どうぞ。 ◆作品について ブログに掲載した作品へのお問い合わせは、メールでお願い致します。 アトリエ販売もしております。 ◆作品、タイル教室に 関するお問い合わせ istanbultile@gmail.com へ。 旅行口コミ情報 カテゴリ
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