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Baba Nakkaş (ババ ナッカシュ)様式

15世紀後半、いよいよ、宮廷工房でデザイナー達が次々と図案を生み出し始め、
オスマン朝文化が華やかに展開してゆきます。
まずはオスマン朝ブルーホワイトの3様式(ババ・ナッカシュ、ハリチイシ、サズヨル)
のうち、Baba Nakkaş (ババ・ナッカシュ)様式 から、ご紹介したいと思います。

ババ・ナッカシュ様式は、宮廷デザイナーの第一人者ウズベキ出身のBaba Nakkaş(ババ・ナッカシュ) のアトリエから生まれました。
(トルコ語でババはお父さん、ナッカシュはデザイナーです。デザイナー達の親父さん
的な方だったんでしょう。)

ルーミーとハターイ様式を巧みに組み合わせ、他に、中国雲、幾何学文様、アラビア
文字をモチーフとして使いました。
と言うと、とても普通?な古典装飾に思えますが、伝統的なモチーフを極めてオリジナ
リティーある形で描いているのです。
私、最初に見た時、
「これって、ありですか?ババ・ナッカシュさん遊んでる?」
と思いましたもの。

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               (ババナッカシュ流ハターイ。)
Baba Nakkaş (ババ ナッカシュ)様式_b0206491_20565693.jpg

                      (ペンチ。)
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           (巨大なルーミー。もう何とコメントしていいのか。。。)

葉先をくるりと内に覆いかぶせるような葉や、渦巻きを描いたような丸い輪郭線を
持つハタイやペンチ、シイタケの断面図あるいは凧のようなルーミーなど、馴染みの
伝統的モチーフを一つ一つ個性的に三次元的な感じを与え表現をしています。
どうでしょうか?お好みですか?
私は、、、好きなんです。描いてて楽しいのですよ。

ババ・ナッカシュ作品の重要性は、諸々の点で“初尽くし”な事です。
まずは、前述した通り、ルーミーとハターイ様式を組み合わせて初の宮廷様式を
作り出したこと。これは、チニ・陶器に限らず、テズヒップやメタルワークでも見られます。
チニ・陶器においての“初”は、それまでの赤土にかわり初めて磁器に似た石英を多く
含む白土が用いられた事、そしてその生産のために宮廷とイズニックとを繋ぐ生産ライン
が起こされた事です。
宮廷がチニ・陶器生産に本格的に力を入れ始めたことを示しています。

Baba Nakkaş (ババ ナッカシュ)様式_b0206491_2117449.jpg

ババナッカシュ、タイル作品は少なく、ほとんどがお皿や壷といった陶器作品です。
1470年代から1520年代にみられるババナッカシュ作品、初期の作品は、当時流行
していた中国青花の構図を模したタイプです。
Baba Nakkaş (ババ ナッカシュ)様式_b0206491_2113660.jpg

濃い藍地に白抜き模様で、息が詰まりそうになる程に密度濃く埋め尽くしています。
モチーフ一つ一つが同じような大きさで描かれ、几帳面で硬いイメージを与えます。
かなり高度に練られた構図です。
Baba Nakkaş (ババ ナッカシュ)様式_b0206491_2163818.jpg

時代が下るにつれ、反転し白地に青で描かれるようになり、余白が多くとられ、モチーフに
大小のメリハリが見られます。
よく考えられた構図であることには変わりありませんが、初期に硬いイメージに比べると、
肩の力が抜けた感があります。

ババナッカシュ様式、デザインにはくだけた様な面白みがありますが、やはり宮廷デザ
イナーの手によるものですから、構図や絵付けの美しさ、器の質の良さは最高です。
前回紹介したミレトス手と同時代のものなのです。
宮廷使いのお皿と、一般大衆用のお皿。
違いますねぇ~。
by ateliercinicini | 2010-11-05 21:35 | 様式・文様・技法の話 | Comments(2)
Commented by orientlibrary at 2010-11-06 10:12
びっくりです。とても親しみを感じる絵柄でした。ウズベク出身とあったから先入観になったのかな?
でも、近いです。とくに「巨大なルーミー」は近さを感じます。ウズのデザインも長い伝統を受け継いできているのだから、職人さんたちがこういう絵柄、模様を習ったのではと推測します。
ウズで買った「絵付け職人のABCテキスト」にも、こんな感じの花柄がありました。イラン人のさぶ先生はヨーロッパ的と言っていましたし、確かにパターンで見るとそうも見えるのですが、もしかして古くからあるものなのかも。
リシタンのAさんが見たら、大好きになりそうだし、感動しそう。このようなノビノビした絵を描いてますから。。
かなり東方のニュアンスがありますね。中国ブームだったのでしょうねえ。
これは博物館での撮影でしょうか。どこで見られるのでしょうか。イスタンブールは何回か行ったのですが、立ち寄り程度でしっかり見ておらず、ほぼ白紙状態です。
Commented by ateliercinicini at 2010-11-07 02:57
◆おりえんと さん
ウズベクのデザインを見続けてきた おりえんとさん がおしゃるんですから、
ババナッカシュ様式はかなりウズベク色強いんでしょうね。
この“ババナッカシュ”と“サズ様式”は、オスマン朝を代表するものでありながら、
私にとって、オスマン朝的でないという不思議な位置づけのものなんです。
そう、東方的なんですよね。
ティムール朝文化の流れを引いているのかと思います。

上から5つ目の写真は、イスタンブルで『ルーブル博物館展』があった時に撮影したもので、他はÇinili Köşk(チニリ・キョシュク)の常設作品です。
この博物館、小さいのですが見応えあります!お勧めです。
次回お越しの際は是非!
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