人気ブログランキング | 話題のタグを見る

モチーフの話・バラの持つ意味

冬から一気に夏に突入したイスタンブル。
家の庭でもバラが咲き、毎朝窓を開けると甘い香りが部屋の中に流れ込んできます。
バラの存在感は圧倒的です。
その美しさから思えば当然な事、オスマン朝装飾でもバラのモチーフはよく使われま
した。布や絨毯を始め、もちろん陶器でも好まれて描かれています。

ですが、コーランの挿絵やモスク・廟の壁面タイルで多用されているのは、美しいから
という以上に、宗教的シンボルとしての性格によるところが大きいと思われます。
オスマン朝でチューリップが神の変化とみなされたのに対して、バラは預言者の汗
から伸び、神の慈愛に到達する魂のシンボル
であるとされていました。

そんな意味を持つ美しいバラ。
タイル・陶器で描かれるとこんな形になります。

モチーフの話・バラの持つ意味_b0206491_5391599.jpg

              ルーブル美術館蔵 16世紀イズニック皿  
     
     お皿に描かれたバラ。
     蕾は分かり易いですが、横から見た姿、これがバラだとすぐに分かる人は
     少ないのではないでしょうか?
     なんだか脳の様で、美しいとは言い難い・・・。


モチーフの話・バラの持つ意味_b0206491_5401169.jpg

              リュステムパシャ・モスク 正面入口左壁     

     上から見たバラ、蕾、そして下(裏)から見たバラ。
     上から見たバラの図は、ペンチと同じに見えます。
     この二つを見分けるには葉を見てみましょう。
     バラの葉はふっくらと、そしてギザギザとしています。

モチーフの話・バラの持つ意味_b0206491_5432242.jpg

               エユップ・スルタン廟の外壁

     こちらも、リュステムパシャ・モスクのタイル同様に、ペンチに似ています。
     上から見たバラの花と蕾です。
     壁面装飾タイル全般に言えることですが、一枚のタイルから受ける印象と、
     それが壁一面に並んだ時に受ける印象が変わります。

モチーフの話・バラの持つ意味_b0206491_544691.jpg

            
     同じタイルの並ぶ右上に一枚、サイズが異なる青地に白文字のタイルが嵌め
     込まれています。
     書かれている文字は預言者の名、ムハンマド
     タイルのサイズが異なるので、前もってここにこのタイルを嵌め込む事は
     プランになかったのだと思います、私見ですが。
     スルタン・エユップ廟を修復する際に、建築指揮をした人が命じたのか、
     タイルを張る職人さんが自らの思いで嵌め込んだのかわかりません。
     ですが、ここがムハンマドの同志アブー・アイユーブ・アル=アンサーリー
     の廟であることを想い、バラの象徴するところを考えると、バラ柄のタイル
     の上に、ムハンマドの名が置かれたことが一層意味深く感じられます。



クリック、ありがとうございます!

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 海外生活ブログ トルコ情報へ
にほんブログ村
by ateliercinicini | 2011-06-15 06:31 | 様式・文様・技法の話 | Comments(8)
Commented by teppeiyama at 2011-06-15 20:37
エユップ・スルタン廟のタイルは、なんか花が目・蕾が口みたいでかわいい。
そう思ってしまったら最後、いっぱい顔が並んでいるようにしか見えない・・・
Commented by yildizKSmama at 2011-06-15 21:21 x
トルコのタイルといったら、やっぱりチューリップが
思い浮かびますが、カーネーションやらバラやら色々な
花を描いているのですね。
しかし、このバラ・・・椿のようでバラとは言い難い。
上から見れば、ペンチに似ているし。
葉を見て判断するのですね。見方を覚えるとより、
タイルを見たときに面白さが増しますね。
本当に、勉強になります。チョック テシェキュレル
Commented by ateliercinicini at 2011-06-17 04:29
◆ teppeiyama さん
 本当ですね。そう言われてみれば、目鼻に見えます。
 蕾のガクが、鼻に見えてきましたよ。
 あ、もう、私にも顔にしか見えなくなってきました。
Commented by ateliercinicini at 2011-06-17 04:34
◆ yildizKSmama さん
 トルコタイルと言えば、チューリップが印象的ですよね。
 ですが、バラやカーネーション、ヒヤシンスもよく使われるのですよ。
 タイルを見るときに、チューリップ以外の花にも目をむけて、楽しんで下さいね。
Commented by zeytin at 2011-06-17 19:23 x
確かに顔に見えます(爆笑)。
バルタン星人? ムンクの叫び?のようにみえるのは私だけでしょうか?
脳みそににたバラはあまり好きになれません。じゃあもっとしっくりしたかたちにしろっていわれたら???どうなるんでしょう?
Commented by ateliercinicini at 2011-06-18 03:28
◆ zeytin さん
バルダン星人?ほんとだ、宇宙人っぽいですね。
ナスカの地上絵?ハニワ系にも見えますね。

私も、バラを描くの苦手なんです。
この横から見たバラのモチーフを用いて、ナチュラリスト様式の組タイルを描こうと試みるのですが、なかなか納得いくものが仕上がりません。難しい。
Commented by madamkase at 2011-06-18 15:33 x
やっぱり皆さん同じことを考えるみたい。
私が、「ほらほら、あのエユップ・スルタンの・・・」と言っていたのは、
このモチーフのことです。
説明し切れなかったのですが、これはとても可愛いですね。
別嬪さん、と名づけたいわ。
タイル職人さん達の遊び心も見られるような気がして、愛しい作品です。
Commented by ateliercinicini at 2011-06-19 18:58
◆ madamkase さん
madamkase さんのおっしゃっていた 「唇のぽってりした女の子のような、、、」
というのは、このタイルだったのですね。 納得です。
それにしても、凄いですね~、皆さんの想像力。
<< 《絵付けのコツ》 ハリチ手の描き方 ニシャンタシュで Art Cl... >>