オスマン朝 ブルーアンドホワイトの始まり

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               (トプカプ宮殿割礼の間外壁面タイル)

 15世紀第二四半世紀頃より始まったオスマン朝のブルーアンドホワイト陶器・タイル
生産のきっかけとなったのは、当時なかなか手に入れることができなかった中国青花の
流行です。
中国からもたらされた元および明代磁器は近東の陶器やタイル芸術に強烈な影響を与え
ます。中国磁器の多くは海路で一部は陸路を通りイラン(ティムール朝、サファヴィー朝)、
シリア、そしてエジプト(マムルーク朝)へと持ち込まれており、これら中国陶磁器の注文
主もそれを扱う商人も、多くはイラン人、アラブ人でした。

同時期のオスマン朝と中国との交易関係はと言うと、これらの国々に比べると極めて限ら
れたもので、中国陶磁器の入手は困難でした。
それでも、中国陶磁器がほしいオスマン朝スルタンはどうしたか?
輸入陶磁器の代わりに、中国明代磁器に似せた陶器やタイルを国内生産するよう宮廷
工房に命じ、イズニック、キュタフヤへ注文し始めることにしたのです。

1514年、スルタン・セリムがアレッポとダマスカスを手にし、1516-17年にスルタン・
スレイマンがイラクと北東イランへとオスマン帝国領土を拡大した事により、この地域に
あった豊富な中国磁器コレクションがオスマン朝宮廷へと運びこまれます。
スルタンは大喜びしたに違いありません。

この中国磁器コレクションを元にしたブルーアンドホワイト陶器やタイルは、宮廷から
イズニックとキュタフヤへなされた類似デザイン品やレプリカの注文生産によって、
オスマン朝に根付いたものとなってゆきます。

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          (イスタンブル・トプカプ宮殿所蔵 明代磁器)
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        (イズニック産皿 / 『IZNIK』 Nurhan Atasoy より)

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          (イスタンブル・トプカプ宮殿所蔵 明代磁器)
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        (イズニック産皿 / 『IZNIK』 Nurhan Atasoy より)

中国磁器をコピーしつつも、やっぱり空間の残し方、モチーフの大きさ・バランスを自分達
好みにアレンジしています。面白いですよね。

15世紀後半から16世紀中葉、イズニック、キュタフヤでの中国磁器のコピー生産と平行
して、オスマン朝宮廷工房からは独自のブルーホワイトの3様式(ババ・ナッカシュ、
ハリチイシ、サズヨル
)が生み出されてゆきます。
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# by ateliercinicini | 2010-10-19 20:46 | 様式・文様・技法の話 | Comments(4)

始まりました!装飾タイル展

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装飾タイル展『タイル庭園の春』始まりました!
10月14日、しとしとと雨の降る肌寒い日でしたが、多くの方がギャラリーに足を運んで
下さって、賑やかな開幕となりました。
最初はあまりに込み合っていて、作品を見て回るのが困難な程でした。
本当に有難い。
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オープニングでは、伝統トルコタイルや陶器に描かれる文様について、今回の作品に
おける新しい試みについての話が30分程あり、皆、真剣に耳を傾けていました。
私も、久々のシターレ先生(写真左)の講義に、学生時代に戻った気分。
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今回の作品群。
ちょっと遠目からで個々の作品は見づらいと思いますが、全体に大きな作品が多く
力作揃いなのがお分かりでしょうか?
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どれも生き生きとしていて素敵です。
伝統も守り、更に、自分らしさも出しています。

一堂に集められた作品を見て改めて感じた事は、子供の頃から育ってきた文化の
影響って大きい、という事です。
一つ一つの作品はとても個性的ですが、全体にまとまりがあります。
(その中で異質な感があったのは、日本人の作品。調和を乱してごめんなさい。)
トルコ人の構図は、たいてい左右対称で、空間恐怖症的に画面を埋め尽くし、余白は
均等に配しています。これが、彼らには落ち着くのですね、きっと。
ところが、この構図は私には圧迫感を与えるのです。だから、左右対称を崩し、余白も
多めに取ってホッとします。
余談ですが、実はこの感覚の違いが、大学在学中、苦労した原因でもあります。
伝統芸術を学ぶ以上、基礎は受け入れて真似なければならないですから。
これはもう文化の違い、血の違いですから、難しい。。。

これから、来てくださる方、作品展には様々な作品があります。
伝統的なもの、斬新なもの、現代的なもの、調和を乱したもの。
色々な見方で楽しんでくださいね。
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入り口のこんな垂れ幕(↑)が目印です。

オープニングで、雨の中来て下さって皆さん、本当にどうも有難うございました!
これから来てくださる方、有難うございます!
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# by ateliercinicini | 2010-10-18 03:25 | 展覧会・作品展 | Comments(0)

装飾タイル展のご案内 本日オープニング!

装飾タイル展『タイル庭園の春』 本日18時オープニングです。

昨日は、会場作りをして来ました。
何十人もの人の個性的な作品を配置するのって、本当に大変ですね。
作品はそれぞれが個性的すぎて、全体がバラバラ。
会場作りでは、船頭多くして船山にあがる。
芸術系かつトルコ人気質が溢れる人々は、大学へ入学したその日から、
各々が自分が一番!の自称芸術家ばかりですし、、、
朝から始まった会場作りは夜までかかってしまいました。

それにしてもトルコ人はすごい!
自分を最高に見せる事に関しては、女性、男性問わず気力も体力も底なしです。
意見を否定されてもめげない、妥協しない、主張を曲げないタフさ!
外見重視の生来の派手好き!
最後にはとっても華やかな会場が出来上がりました。
見習わないといけない点がたくさんあるなぁと思った一日です。

本日18時オープニングです。
(夕べの段階でカタログがまだ出来てなかった。大丈夫か?)
お時間のある方、どうぞお立ち寄りくださいね。
お待ちしております。
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# by ateliercinicini | 2010-10-14 19:24 | 展覧会・作品展 | Comments(0)

君侯国時代~オスマン朝初期(14-15世紀)タイルについて

このブログではトルコタイルについて思いついたまま点描的に書いているのですが、
やはり大雑把にでも歴史的流れをつかんでおいた方が、タイルを見るときに更に
面白くなると思いますので、今回はちょっとばかり退屈な概説を書いておきます。

諸君侯が割拠した14世紀、現在のトルコの大部分であるアナトリアでは、ルーム・
セルジューク朝期ほどの手の込んだタイル装飾はみられません。
(ルーム・セルジューク朝期のタイルについては、いつか書きたいと思っています。)
中央、東と北アナトリアではセルジューク朝芸術の跡が残り、南アナトリアでは、
エジプト、イランなど別のイスラム芸術の影響が見らる、と言ったように各地で技法
的にも様式的にも多様で混沌とした模索期に入っていたと言えます。
この時代は、主として彩釉煉瓦、モザイクタイル、単彩彩釉タイルが用いられ、更に
クエルダセカ技法が新たに加わります。

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        (イズニック、イェシル・モスクのミナレットの彩釉煉瓦)

大きな変化は西にオスマン朝が出現すると共に現れ、この流れがオスマン朝初期から
オスマン朝古典期へと展開するオスマン朝芸術の先駆けとなります。
ブルサにあるオスマン朝初期の建築物ではベイリック時代用いられた技法と共に
釉下絵付ブルーアンドホワイトが使われ始めたことが見てとれます。

(ブルサは静かでそれ程大きくない街です。街そのものがタイル博物館のようで多種
多様なタイルで溢れていて、タイル好きにはお勧めの街です。)

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      (ブルサ、イェシル・モスクのモザイクタイル。細かいです。)
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  (ブルサ、ジェム・スルタン廟の単彩彩釉タイル。基本はコバルトとターコイズブルー)
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      (よく見ると、上から金彩が施されているのがわかります。)
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            (ブルサ、イェシル・モスクのクエルダセカ。)
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  (ブルサ、シェッザーデ・アハメット廟。ブルーアンドホワイトタイルのボーダー)

その後ブルサの次に首都となったエディルネ、そしてイスタンブルでは彩釉煉瓦、
モザイクタイルが次第に使われなくなり、16世紀中頃にはクエルダセカによる装飾も
なくなってしまいます。オスマン朝では専ら釉下絵付け技法を用い、その中で様々な
様式を展開してゆくことになるのです。
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# by ateliercinicini | 2010-10-11 20:08 | 様式・文様・技法の話 | Comments(0)

『タイル庭園の春』 ・ 装飾タイル展

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来週、10月14日(木)より10月24日(日)の期間、イスタンブル・ベイオールの
イスティクラル通りで装飾タイル展があります。

『 Çini Bahçesinde Nevbahar / タイル庭園の春 』 
   Minar Sinan Güzel Sanatlar Ünversitesi
   Sitare TURAN BAKIR Atölyesi öğrencileri


私の卒業大学、伝統トルコ芸術学科チニ(装飾タイル)専攻アトリエの展示会です。
今回の展示は、全ての準備を先生方がして下さって、生徒である私達は作品を提出
しただけという感謝、感謝の展示会となりました。
来週開催なのですがポスターも招待状もまだ刷り上っていませんので、ここで案内
させて頂きます。

初日、10月14日(木)、オープニング18時で、同時にシターレ・トゥラン・バクル教授
による短い講演もあります。
  Türk Çini ve Seramik Sanatında Tasarım Anlayışı
   Pro.Dr. Sitare TURAN BAKIR


シターレ先生指導の下、私達学生は、伝統様式に則ったタイル製作をするだけでは
なく、これまでの伝統様式で使われなかった花々を、様式化して独自のスタイルを
持った形で描く試みをしてきました。
その試みの開花を、この展示会で見て頂けると嬉しく思います。

上に載せたポスターでは、お恥ずかしながら、私が製作したタイル画を使って頂きま
した。左端に見える花は“サギ草”を様式化して、一つのタイルパネルの中でチュー
リップと一緒に使っています。(季節感なし、四季ごっちゃまぜがトルコ的です。)

10月14日(木)~24日(日)の期間、イスタンブルにいらっしゃる方でタイルや陶器に
ご興味のある方は、是非お越し下さい。お待ちしています。

場所は、Beyoğlu Belediyesi Sanat Galarisi No.217 Tünel 34433 Beyoğlu
  (イスティクラル通りのトゥネルに近いところです。平日は18時まで、日曜休み)
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# by ateliercinicini | 2010-10-08 03:34 | 展覧会・作品展 | Comments(6)