15世紀後半、いよいよ、宮廷工房でデザイナー達が次々と図案を生み出し始め、
オスマン朝文化が華やかに展開してゆきます。 まずはオスマン朝ブルーホワイトの3様式(ババ・ナッカシュ、ハリチイシ、サズヨル) のうち、Baba Nakkaş (ババ・ナッカシュ)様式 から、ご紹介したいと思います。 ババ・ナッカシュ様式は、宮廷デザイナーの第一人者ウズベキ出身のBaba Nakkaş(ババ・ナッカシュ) のアトリエから生まれました。 (トルコ語でババはお父さん、ナッカシュはデザイナーです。デザイナー達の親父さん 的な方だったんでしょう。) ルーミーとハターイ様式を巧みに組み合わせ、他に、中国雲、幾何学文様、アラビア 文字をモチーフとして使いました。 と言うと、とても普通?な古典装飾に思えますが、伝統的なモチーフを極めてオリジナ リティーある形で描いているのです。 私、最初に見た時、 「これって、ありですか?ババ・ナッカシュさん遊んでる?」 と思いましたもの。 (ババナッカシュ流ハターイ。) (ペンチ。) (巨大なルーミー。もう何とコメントしていいのか。。。) 葉先をくるりと内に覆いかぶせるような葉や、渦巻きを描いたような丸い輪郭線を 持つハタイやペンチ、シイタケの断面図あるいは凧のようなルーミーなど、馴染みの 伝統的モチーフを一つ一つ個性的に三次元的な感じを与え表現をしています。 どうでしょうか?お好みですか? 私は、、、好きなんです。描いてて楽しいのですよ。 ババ・ナッカシュ作品の重要性は、諸々の点で“初尽くし”な事です。 まずは、前述した通り、ルーミーとハターイ様式を組み合わせて初の宮廷様式を 作り出したこと。これは、チニ・陶器に限らず、テズヒップやメタルワークでも見られます。 チニ・陶器においての“初”は、それまでの赤土にかわり初めて磁器に似た石英を多く 含む白土が用いられた事、そしてその生産のために宮廷とイズニックとを繋ぐ生産ライン が起こされた事です。 宮廷がチニ・陶器生産に本格的に力を入れ始めたことを示しています。 ババナッカシュ、タイル作品は少なく、ほとんどがお皿や壷といった陶器作品です。 1470年代から1520年代にみられるババナッカシュ作品、初期の作品は、当時流行 していた中国青花の構図を模したタイプです。 濃い藍地に白抜き模様で、息が詰まりそうになる程に密度濃く埋め尽くしています。 モチーフ一つ一つが同じような大きさで描かれ、几帳面で硬いイメージを与えます。 かなり高度に練られた構図です。 時代が下るにつれ、反転し白地に青で描かれるようになり、余白が多くとられ、モチーフに 大小のメリハリが見られます。 よく考えられた構図であることには変わりありませんが、初期に硬いイメージに比べると、 肩の力が抜けた感があります。 ババナッカシュ様式、デザインにはくだけた様な面白みがありますが、やはり宮廷デザ イナーの手によるものですから、構図や絵付けの美しさ、器の質の良さは最高です。 前回紹介したミレトス手と同時代のものなのです。 宮廷使いのお皿と、一般大衆用のお皿。 違いますねぇ~。
by ateliercinicini
| 2010-11-05 21:35
| 様式・文様・技法の話
|
Comments(2)
Commented
by
orientlibrary at 2010-11-06 10:12
びっくりです。とても親しみを感じる絵柄でした。ウズベク出身とあったから先入観になったのかな?
でも、近いです。とくに「巨大なルーミー」は近さを感じます。ウズのデザインも長い伝統を受け継いできているのだから、職人さんたちがこういう絵柄、模様を習ったのではと推測します。 ウズで買った「絵付け職人のABCテキスト」にも、こんな感じの花柄がありました。イラン人のさぶ先生はヨーロッパ的と言っていましたし、確かにパターンで見るとそうも見えるのですが、もしかして古くからあるものなのかも。 リシタンのAさんが見たら、大好きになりそうだし、感動しそう。このようなノビノビした絵を描いてますから。。 かなり東方のニュアンスがありますね。中国ブームだったのでしょうねえ。 これは博物館での撮影でしょうか。どこで見られるのでしょうか。イスタンブールは何回か行ったのですが、立ち寄り程度でしっかり見ておらず、ほぼ白紙状態です。
0
Commented
by
ateliercinicini at 2010-11-07 02:57
◆おりえんと さん
ウズベクのデザインを見続けてきた おりえんとさん がおしゃるんですから、 ババナッカシュ様式はかなりウズベク色強いんでしょうね。 この“ババナッカシュ”と“サズ様式”は、オスマン朝を代表するものでありながら、 私にとって、オスマン朝的でないという不思議な位置づけのものなんです。 そう、東方的なんですよね。 ティムール朝文化の流れを引いているのかと思います。 上から5つ目の写真は、イスタンブルで『ルーブル博物館展』があった時に撮影したもので、他はÇinili Köşk(チニリ・キョシュク)の常設作品です。 この博物館、小さいのですが見応えあります!お勧めです。 次回お越しの際は是非!
|
アトリエ・チニチニより
イスタンブルの新市街、
シシリ・ジャーミー近くにて の~んびりトルコペースで タイル画制作をしています。 お近くにお越しの際は、 お気軽にお立ち寄り下さい 。^^ ◆ タイル絵付け教室 【定期コース】 ご都合の良い日時に受講 して頂けます。 予約制ですので、不定期 にしかお時間のとれない 方にもご参加頂けます。 【短期フリー制作コース】 作りたい作品を集中して 制作するコースです。 オリジナルデザインの タイルのプレゼントや、 表札の自作など、 目的に合わせ、 短期間で仕上げて 頂けます。 【体験コース】 制作時間2~3時間 旅行者の方もお気軽に どうぞ。 ◆作品について ブログに掲載した作品へのお問い合わせは、メールでお願い致します。 アトリエ販売もしております。 ◆作品、タイル教室に 関するお問い合わせ istanbultile@gmail.com へ。 旅行口コミ情報 カテゴリ
絵付け教室 日々の絵付けと作品と ヤズマ(木版プリント)・草木染 様式・文様・技法の話 オスマン芸術・トルコ芸術 イスタンブルで大学生活 イスタンブルの日常生活 タイル・陶器・工房散策 (陶器以外の)工房・お店巡り 展覧会・作品展 モスク・廟巡り トルコ国内旅行 日本 旅 おすすめ本 ご挨拶 アトリエ・チニチニ Tokyo 最新の記事
最新のコメント
記事ランキング
フォロー中のブログ
写真でイスラーム イスラムアート紀行 はなももの別館 トルコ~スパイシーライフ♪ 陶芸つれづれ 器と暮らし 陶房 火風水だより 南エーゲ海・ボドルム陶芸生活 Cinq lapins NO ANCHOVY, ... 絵と毎日とおしゃべりと ... わんわんぶー 地中海とエーゲ海が出会う... Cinq lapins ... 外部リンク
以前の記事
検索
タグ
イスタンブル生活(215)
作品作り(133) タイル絵付け教室(116) 陶小物作り(77) イスタンブル(59) 引きこもり生活(44) 展覧会・作品展(36) イズニック(32) トルコタイルの話(32) タイル・陶器・工房散策(30) 伝統芸術・工芸(29) 旅(26) 様式・文様・技法(23) 日本(12) 大学生活(11) 工房・骨董品屋・お店 etc.(9) キュタフヤ(9) シリア(6) トルコ国内(6) 工房・骨董品屋・お店 etc.(6) ブログパーツ
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||