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オスマン朝時代生まれの先生

私の卒業したM大学には、愛校心の強い先生方がとても多く、退官された後も
大学に通い、かつて教え子であった現在の教授・助教授達をアシスタントにして
指導にあたられる方もいらっしゃいます。

80代、90代の先生方。学者として、画家として活躍し続けて来られた方ばかり。
とてもパワフルです。そしてチャーミングです。

「トルコ古典装飾」のK先生もそのお一人でした。
途切れることなく話し続けられ、私達学生の描いた絵への批評をして下さるのですが、
なにせオスマン朝時代に生まれた方です。
言葉が全く分かりません。。。
使われる言葉はトルコ語なのですが、単語がほとんどペルシャ語とアラビア語ばかり
なのです。
K先生は授業の際には、いつも私を一番前の真ん中に座らせ、私に向かって話され
ました。そして話終わった後、決まって、

「 R子、僕の言ったこと、分かったでしょ?繰り返し言ってみなさい。 
 僕は、君に向かって話したんだよ。 分からなかったとは言わせないよ。 


と言うのです。勿論、チンプンカンプンです。全く分かりません。

「 ごめんなさい、先生。全く分かりませんでした。 」

と答えると、嬉しそうに笑って、

「 あららら~。分からなかったの?
 ちゃんと来週までに復習して宿題して来るんだよ。これあげるね。
 」

とポケットから手描きのお手本や参考資料を取り出して私に渡し(公然のエコ贔屓)、

「 僕疲れたなぁ。じゃ、後の授業は○○教授に任せましたよ。では皆さん、又来週!
 誰か、僕が階段を下りるの手伝って下さい。
 」

と片手に杖を持ち、男子学生の腕につかまり帰って行かれる、そんな先生でした。


もうお一人、私は授業を受けることが出来なかったのですが、トルコ美術史のO先生も
オスマン朝時代のお生まれ。

試験対策の為にO先生に、

「 テスト勉強の為に先生のノートをコピーさせて下さい。 」

と大胆不敵にも正面から依頼に行った学生に、

「 いいですよ。貸してあげますよ。でも君に読めるかな? 」

とすました顔でオスマントルコ語(アラビア語表記)で書いた授業ノートとメモを手渡した
そうです。


素敵な先生方、楽しい授業でした。

大学時代の友達と会うと 思わず笑いながら懐かしむ話です。
でも、同時に、文字・言葉が変わった事がもたらした問題を目の当たりにして、諸々
考えさせられもするのです。
# by ateliercinicini | 2010-09-11 07:16 | イスタンブルで大学生活 | Comments(8)

サズ様式

サズ様式_b0206491_2256267.jpg

トルコタイルと言うと、トプカプ宮殿にあるこのタイル画を思い浮かべる方、
多いのではないでしょうか?私もこのタイルが大好きです。

先の尖った長い葉が、大きくうねる波の様に螺旋状に伸びていき、
その大きな葉の間、間に、鳥が顔をだし、
葉の根元でのんびりと麒麟が葉を銜えている。
そんな森の中にいるかのような場面を描く様式があります。
Saz Yolu (サズヨル) ”、サズ様式です。

”Saz yolu" という名前の由来にはいくつか説がありますが、
古いトルコ語で ”Saz” が森という意味であったことからこの名前が
付けられたというのが最もよく記されている説です。

”Saz Yolu”とトルコ語で名づけられ、オスマン朝では16世紀中頃、
Şah Kulu (シャークル)によって始められたこの様式は、オスマン朝美術を
代表するものの一つなのですが、実はこの様式のオリジンは15世紀イラン。
Herat やTebrizではタイルに描かれることはなく紙上に描かれていました。

オスマン朝で宮廷工房長であった Şah Kulu はもともとは、戦争捕虜として
Tebriz から連れて来られた人です。彼によりTebrizの様式が持ち込まれたの
です。
      
*****     *****     *****      *****     *****
ちなみに、前回の記事に載せた鳥のタイル画の写真は、このサズ様式で
描いたものです。
サズ様式では鳥は葉や花よりも小さく描かれて、チョコンと顔を出すというのが、
通常なのですが、私は、力強く茎をくわえた大きな鳥を描いてしまいまして、
大学時代の先生に
『サズ様式の日本的解釈ね?まぁ、許容範囲内ね』
と苦笑されてしまいました。
# by ateliercinicini | 2010-09-08 00:06 | 様式・文様・技法の話 | Comments(4)

ドキドキの窯出し!

先月描いた8枚組のタイルパネルが出来上がりました。

出来上がりを見るのはいつもドキドキします。
思い通りに出来上がったかしら?
綺麗に仕上げられたかしら?
割れてないといいなぁ~。
期待と不安で複雑な心境です。

で、今回は???なんと8枚中3枚も割れていた。。。ショックです。
仕方ないですね。もう一度やり直しです。

ところで、割れているか割れていないかも心配なものですが、それ以上に、心配なのが
出来上がりの色です。絵の具は、焼く前の色と、焼きあがった時の色とは全く違います。
薄めに塗っても濃く出る色。盛り上げる様に塗らないと発色しない色。絵の具によって、
性格は様々。なかなか難しいのです。
ドキドキの窯出し!_b0206491_0394233.jpg

                     (焼成前)
ドキドキの窯出し!_b0206491_0404624.jpg

                     (焼成後)

焼成前の色の方が好きだから、焼かないでと言われることもあるのですが、やっぱり
焼いて釉薬の光沢輝くタイルの方が素敵だと思うのですよ、私。
# by ateliercinicini | 2010-09-07 00:54 | 日々の絵付けと作品と | Comments(1)

楽しい!トルコタイル体験教室!

トルコタイルに興味はあっても、タイル作りの町イズニック、キュタフヤは遠いし、
トルコ語はわからないし、、、とタイル絵付けを諦めていた方、いらっしゃると思います。

イスタンブルに在住の方はもちろん、旅行で来られた方も、お気軽にタイル絵付けを
体験して頂けます。もちろん、日本語で!

体験コースではお好きなデザインを選んで、線描、彩色まで。所要時間は3~4時間。
材料等は教室で用意致しますので、手ぶらでお越し下さい。
初心者の方向け半日体験コース(3~4時間) ¥5,000-です。
(出来上がったタイルは焼成後、お送りします)
どうぞ、試してみてください。
楽しいですよ!

そして、”あらっ、楽しい!趣味として続けたいわ!”とおっしゃる方。
通常コース、出張教室もあります。

体験コース、通常コース、出張教室。 いずれも、ご興味のある方は、タイトルに 
”タイル教室”と明記の上、 istanbultile@gmail.com 宛に お問い合わせ下さい。

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 体験コースの作品例です。5cm角ほどのタイル。可愛らしいっ!
 裏にマグネットを貼ってもいいですし、額装してもまた雰囲気が変わって良いのです。

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通常コースの作品例です。素敵です!
(サイズは 20cm X 20cm)
# by ateliercinicini | 2010-09-05 21:18 | 絵付け教室 | Comments(2)

トルコタイルは、”中国物”

トルコ語で、壁面を飾る装飾タイルの事を一般に ”Çini (チニ)”  と言います。
もともとペルシャ語で Çin = 中国、 Çini = 中国の物。

日本でも昔、中国から来た品々を ”唐物” と呼んで珍重していたのと同様で、
オスマン朝時代の人々にとっても、中国から運ばれてきた陶磁器は貴重で
憧れの”中国物”だったのですね。

中国陶磁器が手に入るようになり、時が経つにつれて、白地に文様が描かれた
焼き物の事をチニと呼ぶようになったようです。


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           (エディルネ、ムラディエモスクのミフラブの一部)

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          (イスタンブル、トプカプ宮殿所蔵 元代磁器)

本当によく似ています。特にザリガニのような葉っぱがそっくり!
当時のタイル職人さん達は、中国の陶磁器文様を一生懸命真似て、自分のものに
しようと励んでいたのでしょう。

私は、オスマン朝時代に作られた中国風イズニックタイルをコピーしてみました。
トルコタイルは、”中国物”_b0206491_19374532.jpg

ゲブゼにある チョバン・ムスタファパシャ廟のタイルです。
白地に青、落ち着いていいですね。
# by ateliercinicini | 2010-09-05 19:39 | 様式・文様・技法の話 | Comments(2)